冷たい雨が降る中での開催となった、スペインバスク地方の伝統あるワンデーレース「プルエバ・ビリャフランカ・オルディジアコ・クラシカ(UCI-1.1)」。
増田成幸の東京五輪出場に向けてのラストチャンスとなったこのレースに出場した宇都宮ブリッツェンは、その増田が日本人選手でただ一人、終盤に23人にまで絞られた先頭集団に残ってレースを展開。
最終盤に先頭からはドロップしてしまったものの、同様に遅れてしまった選手たちと集団を形成してフィニッシュを目指し、その集団の先頭となる20位でフィニッシュに飛び込んだ。
この結果、増田はUCIポイントを3ポイント獲得。代表選考ポイントでは係数3を乗じて9ポイントを獲得したことになり、レース前に7.2ポイント差でリードを許していたNIPPO・デルコ・ワンプロヴァンスの中根英登をわずか1.8ポイント差で逆転。選考ランキングで五輪出場圏内となる2位に浮上した。
もっとも、このレースでの中根の役割はアシスト。チームメートのサイモン・カーが優勝したことを考えると、中根はレースの勝者だ。ただ、レースに臨む目的が宇都宮ブリッツェンとNIPPO・デルコ・ワンプロヴァンスでは違ったのだ。
中根が自分のためにレースを走っていれば、また、前週にポルトガルで行われたステージレースに出場せずにコンディションをこのレースに合わせていれば、間違いなく増田のみが残った終盤の先頭集団に彼もいただろうと個人的には思っている。
それでも、中根は身を粉にしてアシストに徹し、チームとしての最大の目標である優勝に貢献した。その姿は一人のプロサイクリストとして称賛を受けるべきものだし、私個人としては彼をリスペクトする気持ちがこれまで以上になったことは間違いない。
レース自体は、UCIワールドチームの出場がなかったこともあって、スタート直後から“これぞUCIヨーロッパツアー”と思わせる激しい千切り合いが続く展開だった。
ハイペースのまま進んでいく平坦区間、そして上り区間に入るたびに各チームのアシスト選手がペースアップ。力がなければ集団からふるい落とされ、力がある者だけが生き残る。そんな単純明快とも言える展開のレースで最終盤まで先頭集団でレースを展開した増田もまた、その実力を示す走りを見せた。
その結果として、選考ランキングで出場圏内となる2位に浮上したことに異論を挟む人はいないだろうし、今回のスペイン遠征に帯同はできなかったが長い選考期間の戦いを近くで見てきた私も、増田の努力が最後に報われて本当に良かったという気持ちで一杯だ。
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